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業界トレンド

飲食店サブスクの可能性と限界 ── 継続率とユニットエコノミクスが分ける成否

飲食店サブスクの成否は、「原価構造と継続率」の設計でほぼ決まると考えられます

月額定額の飲食サブスクは、魅力的に見えても設計を誤れば採算が崩れます。本稿では事例とデータをもとに、その可能性と限界を見極めます。

現状把握 ── サブスク市場は拡大、しかし飲食は難しさが残ります

まず市場規模です。矢野経済研究所の調査によれば、日本のサブスクリプションサービス市場は拡大傾向にあり、「外食サービス」を含む複数分野が成長したとされます(出典: 矢野経済研究所)。サブスクというモデル自体は、消費者に広く受け入れられつつあります。

ただし、飲食店のサブスクには独特の難しさがあります。「食べ放題」や「通い放題」を月額制で提供すると、席数という物理的スペースを占有して通常売上の機会ロスが生じるため、一定回数以上通う顧客は採算割れになりやすいとされます。2024年以前のデータも含むため、最新値は各自で確認をお願いします。

構造要因 ── 「原価率」がサブスクの生死を分けます

飲食サブスクの成否は、提供するものの原価率に大きく左右されます。ドリンクやコーヒーのように追加原価が低い品目は、来店頻度が上がっても負担が軽く、ついでの注文を誘発しやすい点で有利です。

逆に、料理そのものを定額で提供するモデルは、来店頻度が上がるほど原価が重くのしかかります。ここに「スーパーユーザー」問題が出ます。極端に多く通う一部の利用者が採算を崩し、平均では採算が取れても全体として赤字化するリスクがあります。

主要プレイヤーの動き ── 3つの類型に整理できます

飲食サブスクは、おおむね3類型に分けられます。

第一は「ドリンク定額型」です。コーヒーやクラフトビールなど、来店ごとに1杯無料といった形式です。月額2,980円で日替わりクラフトビールを提供する事例などがあります(出典: favy公式ブログ)。来店頻度を上げ、ついでの注文を促す狙いです。

第二は「食べ放題・飲み放題型」です。月額制で食べ放題や飲み放題を提供する形式で、お得感が強い一方で原価リスクも大きい類型です。設計を誤ると採算が崩れます。

第三は「権利・優待型」です。定額会員に割引や優先予約、限定メニューなどの特典を付与する形式です。原価負担が軽く、顧客との継続的関係を作りやすい類型です。

限界の側面 ── 牛角の撤退が語る教訓を見ます

ここで批判的視点を併記します。飲食サブスクの限界を象徴するのが、牛角の「焼肉食べ放題PASS」です。2019年11月に首都圏3店舗限定で始まり、月額11,000円で通常3,480円のコースが食べ放題になるお得感が人気を博しました(出典: 日経ビジネス)。

しかし、月わずか3回で元が取れる価格設定が、想定を超えるヘビーユーザーを惹き、月に多数回利用する客も現れました。原価が収益を大きく上回り、採算が崩れたとされます。さらに、人気で予約が埋まり、PASSを持つ客が店に入れない状態も生じたため、販売を終了したと報じられます。席の占有と原価の二重の負担が、食べ放題型サブスクの構造的難点を露わにした事例です。

継続率の面も軽視できません。サブスクは一度契約されても、便利さやお得感を実感できなければ解約されます。一般に、平均継続期間は解約率の逆数で表されるとされ、解約率が高いサービスは短期で離脱されます。「たまにしか使わない」状態が続けば、客は静かに離れていきます。

海外比較 ── 米英の成功例は「低原価品」に集中しています

海外の成功例は、原価設計の重要性を裏付けます。米国のPaneraは、コーヒーやドリンクを定額で提供する「Unlimited Sip Club」を展開し、初期の会員は以前の8倍の頻度で来店し、その約三割が食品を追加したとされます(出典: Restaurant Dive)。英国のPret a Mangerも、ドリンクを中心としたサブスクで会員の取引頻度を大きく高めたと報じられています(出典: Angleブログ)。

いずれも、追加原価の低いドリンクを軸に、来店頻度と付随購買を引き出す設計です。料理そのものを食べ放題にした牛角の事例とは、原価構造が根本から異なります。海外の成功例をそのまま輸入するのではなく、「何を定額にするか」の設計思想を学ぶべきです。

中期予測 ── 3〜5年の複数シナリオを描きます

仮説として、3つのシナリオが考えられます。

「低原価型定着シナリオ」では、ドリンクや優待を軸にしたサブスクが集客ツールとして定着します。原価負担が軽いため、蓋然性が高いと考えられます。

「選別シナリオ」では、原価設計を誤った食べ放題型が退出し、採算が合うモデルのみが生き残ります。試行錯誤を経て設計が洗練される展開です。

「縮小シナリオ」では、採算割れや低い継続率に悩む事例が相次ぎ、サブスクは一部業態のニッチにとどまります。設計難度の高さが普及を阻む展開です。

経営者への示唆 ── 「何を定額にするか」が最初の分岐点です

第一に、定額にする対象の原価率を見極めるべきです。追加原価の低いドリンクや優待はリスクが軽く、料理そのものの定額はスーパーユーザーで崩れやすい点を意識したいところです。

第二に、最悪ケースのシミュレーションが不可欠です。「月に何回使われたら赤字か」を事前に計算し、上限回数や利用条件を設ける設計が、採算を守ります。

第三に、継続率を追う視点が重要です。サブスクは獲得より継続が命で、客がお得感と便利さを実感できる設計が、静かな解約を防ぎます。魅力的な価格より、持続可能な価格を選ぶことが、結局は店を守ると考えられます。

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参考・引用元