本文へ移動
記事を読み込み中…
業界トレンド

ゴーストキッチン、日本での定着可否 ── 市場データと海外の挫折から読む

ゴーストキッチンは、日本では「爆発」ではなく「一部定着」に落ち着くと考えられます

店舗を持たずデリバリーに特化するゴーストキッチンは、コロナ禍で注目を集めました。本稿では国内市場と海外の挫折をデータで照らし、定着の可否を見極めます。

現状把握 ── 市場は拡大したが、土台のデリバリーは頭打ちしています

まず用語を整理します。「ゴーストレストラン」は客席を持たずデリバリー専門で営業する業態、「クラウドキッチン」はそのための厨房設備や貸し厨房を指すことが一般的です。両者は重なって使われます。

富士経済の調査によれば、2023年のゴーストレストランの国内市場規模は535億円と見込まれました(出典: 富士経済グループ)。客数減で厨房の稼働率が低下した居酒屋や専門料理店の参入が中心とされます。

ただし、土台となるフードデリバリー市場自体は頭打ち局面に入っています。調査会社の集計では、2024年のデリバリー市場規模は約7,967億円で、前年比7.6パーセント減と初めて減少に転じました(出典: 日本食糧新聞・Circana、2025年)。2025年は約8,240億円と前年比2.0パーセント増の見込みとされ、コロナ前比では大きく伸びたものの、成長速度は明らかに鈍化しています。2024年以前のデータを含むため、最新値は各自で確認をお願いします。

構造要因 ── 低コスト開業の裏に「手数料と依存」があります

ゴーストキッチンが注目された理由は、賃料と人件費を抑えられる点にあります。スペースを持たないため、少額資金での開業も可能とされます。

しかし、収益構造には難点があります。デリバリープラットフォームの利用料は売上の約20〜30パーセントに達するとされ、利益を圧迫します。さらに、売上をプラットフォームに依存する高さや、実店舗がないことによるブランディングの難しさが課題として指摘されます。低コスト開業の裏側に、構造的な収益圧迫が内在します。

主要プレイヤーの動き ── 3つの類型に整理できます

参入プレイヤーは、おおむね3類型に分けられます。

第一は「既存店活用型」です。客数減で厨房の稼働率が低下した居酒屋や専門店が、既存厨房を使ってデリバリー専用の別ブランドを立ち上げる類型です。コロナ禍の時短営業期に多発しました。

第二は「ブランド開発・フランチャイズ型」です。ゴーストレストラン専用のブランドを開発し、加盟店に多店舗展開させる動きです。出店数が急増した主因とされます。

第三は「貸し厨房型」です。個別区画の厨房を複数事業者に貸し出すシェアキッチン型のサービスで、都心部を中心に展開しています。

挫折の側面 ── 品質と信頼の課題が露見しています

ここで批判的視点を併記します。国内ではブランドの乱立が進み、価格競争の過熱と品質のばらつきが課題化しました。特に、居酒屋などが売上補完策として大量出店したブランドでは、商品の品質が伴わない例があったと公開情報で指摘されています。

実店舗がなく調理現場を目で確かめられないため、消費者は口コミに頼ることになり、ブランドへの信頼を築きにくいとされます。デリバリーサイトによっては、実店舗の存在が確認できないと新規出店を制限する動きも出てきました。乱立への反動が、プラットフォーム側からも起きています。

海外比較 ── 米国では「バブルの収束」が起きています

海外と比べると、日本の状況はまだ穏やかに見えます。米国ではゴーストキッチンのブームが収束し、大手の挫折が相次ぎました。

ソフトバンクが出資したゴーストキッチン企業Reef Technologyは、許可や衛生面の問題も抱えて集約を進め、2024年8月にはニューヨークの3施設を閉鎖したと報じられました(出典: Commercial Observer、2024年)。ウェンディーズは2年以内に700施設を構築するとした計画を大幅に縮小し、米国内のReef施設を閉鎖すると発表しています(出典: Restaurant Dive、2023年)。資金を集めたKitchen Unitedも施設の売却・閉鎖を進め、ソフトウェアに軸足を移しました。

背景には、高いデリバリー手数料、客の店内回帰、単位あたり売上の伸び悩みがあります。デリバリー専用モデルで十分な収益を上げる難しさが、海外の事例から浮かび上がります。日本も、同じ構造的課題を抱えている点は記憶されるべきです。

中期予測 ── 3〜5年の複数シナリオを描きます

仮説として、3つのシナリオが考えられます。

「選別定着シナリオ」では、品質とオペレーションを磨いた事業者が生き残り、乱立したブランドは淘汰されます。最も蓋然性が高いと考えられます。

「補完業態シナリオ」では、ゴーストキッチンが独立業態ではなく、既存店の補完手段として位置づけられます。稼働率向上の補助線として定着する展開です。

「縮小シナリオ」では、デリバリー市場の頭打ちと手数料負担が重くのしかかり、参入が一部退出に転じます。米国の挫折を追う展開です。

経営者への示唆 ── 「手段として扱う」視点が有効です

第一に、ゴーストキッチンは独立した主業というより、既存厨房の稼働率を上げる補助線として扱うほうが現実的です。手数料と品質管理の重さを考えれば、過度な期待は避けたいところです。

第二に、プラットフォーム依存のリスクを直視すべきです。手数料が売上の2割前後を占める以上、原価と値付けの設計が収益を左右します。

第三に、品質を済し崩しにしない姿勢が信頼を守ります。実店舗が見えない業態だからこそ、口コミとリピートが生命線になります。安易なブランド乱立は、中期的には自らの首を絞めると考えられます。

<!-- RELATED -->

📖 さらに深く知る(第3弾より)

参考・引用元