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業界トレンド

飲食店のAI活用、現場の実態

リード

飲食店のAI活用は「未来の話」から「導入済みか検討中か」を問う現在進行形の課題へと移り、期待と「使いこなせなさ」が同居する局面に入っています。

現状把握:四分の一が利用経験あり

飲食店のAI活用は語られる割に、現場の導入実態を示す一次調査は多くありません。その中で、シンクロ・フードが運営する飲食店ドットコムの調査は、数少ない定量データとして参考になります。

同調査(2025年6月10〜16日、回答数326件、インターネット調査)によると、店舗運営でAIを「積極的に利用している」が16.3%、「利用してみたが、うまく使いこなせていない」が10.4%で、合わせて約26.7%がAIの利用経験を持つとされます(出典:シンクロ・フード「飲食店のAI活用状況調査」2025年)。さらに利用経験のない回答者のうち「今後利用したい」が39.3%と、期待は広がっています。

利用経験者の満足度は「非常に満足」28.7%と「やや満足」44.8%を合わせ73.5%に達しました(出典:シンクロ・フード、2025年)。一方で約10%が「使いこなせない」と答えており、導入と定着の間に距離があることも読み取れます。

なおこれらは2025年時点の調査です。AI関連の市場環境は変化が速く、最新の状況は各自ご確認いただくことを前提とします。

構造要因:期待と障壁の同居

導入を押し上げる最大の要因は、深刻な人手不足です。採用難と人件費上昇の中で、需要予測やシフト作成といった定型業務をAIで圧縮し、限られた人員を接客や調理へ振り向けたいという動機が強く働いています。

一方で、障壁も明確です。「使いこなせない」が一定数存在するという調査結果は、ツールを入れるだけでは効果が出ない現実を示しています。データの蓄積、運用ルールの設計、スタッフのリテラシーが伴わなければ、AIは期待された効果を発揮しにくいと考えられます。

加えて、生成AIの普及が心理的ハードルを下げました。メニュー文案やPOP、SNS投稿の作成など、小規模店でも試しやすい用途が増えたことも、利用経験者の裾野を広げたと整理されます。

主要プレイヤーの動き:4つの類型

現場でのAI活用は、おおむね次の4類型に整理できます。

第一類型:需要予測。過去の売上、天候、イベント、人流データを組み合わせて日別・時間帯別の来客を予測し、仕入れや人員配置に活かす用途です。高い予測精度を謳うサービスもありますが、精度はデータ量や立地に左右されるため、公表値は参考値として受け止めるのが妥当です。

第二類型:シフト最適化。スタッフの希望、スキル、労働法規、需要予測を同時に考慮してシフトを自動作成する領域です。シフト作成時間の大幅削減や、店長の事務工数削減の事例が報告されています(出典:Optamo事例、2024年前後)。人手不足と直結する領域であるため、関心は高まっています。

第三類型:AI接客・音声応対。電話予約の自動応答や、予約・問い合わせを処理するチャットボットが含まれます。LINEは2019年に飲食店向け電話自動応答の提供を発表しており、24時間の受電対応や取りこぼし防止が期待されてきました(出典:日本経済新聞、2019年)。

第四類型:生成AIによる業務支援。メニュー説明文、SNS投稿、口コミ返信、言語翻訳など、接客以外の事務を補助する用途です。試しやすく初期コストが低いため、小規模店の「最初の一歩」になりやすい領域です。

海外比較:米国ドライブスルーの離脱

海外の事例は、期待と現実の両面を示してくれます。

米国では人手不足を背景にドライブスルーの音声注文AIが拡大しました。ウェンディーズは2023年、グーグル・クラウドと提携した生成AIベースの音声受注システムを始動しました(出典:ITmedia、2023年)。

一方で、マクドナルドはIBMと提携し100店舗超でドライブスルーの自動注文をテストしましたが、2024年にその停止を発表しました。音声認識の精度は約85%で、5回に1回はスタッフの補助が必要だったとされます(出典:海外報道、2024年)。最先端のチェーンですら、現場の複雑な注文に完全対応する難しさを物語る事例です。

日本ではドライブスルー文化が限定的なため、AI接客は電話予約やチャットに重心があります。同じAI接客でも、市場の特性によって用途が分かれる点は興味深いところです。

中期予測:3〜5年の複数シナリオ

メインシナリオ(裏方支援から浸透):需要予測とシフト最適化、生成AIによる事務支援といった「裏方」用途が先行して浸透します。表に見えにくい領域だからこそ、成果が測りやすいところから定着する経路です。

強気シナリオ(POS統合):予約・発注・シフト・需要予測がPOSや予約システムと一体化し、中規模チェーンを中心に「データ連携型AI」が標準装備化する可能性があります。

弱気シナリオ(期待超過への反動):マクドナルドの事例のように、期待が先行した領域で精度不足が露呈し、一部で導入の巻き戻しが起きる可能性があります。「使いこなせない」層が離脱すれば、市場の期待値が一旦調整される局面も考えられます。

批判的視点も併記します。AIの需要予測精度として「95%以上」といった数値が語られることがありますが、これらはツール提供者側の表現であるケースが多く、測定条件が不明瞭なまま鵜呑みするのは危険です。公的統計に乏しい領域だけに、業界関係者の見解と一次調査を区別して受け止める姿勢が求められます。

経営者への示唆

第一に、AIは「裏方業務」から始めるのが現実的です。需要予測やシフト作成は効果が測りやすく、失敗しても接客品質への影響が小さいためです。

第二に、「使いこなせない」リスクを前提に、データ整備と運用定着の工数を見込むことが重要です。ツール導入がゴールではなく、定着させて初めて効果が出ます。

第三に、ベンダーが提示する精度数値は測定条件を確認し、自店のデータで検証する姿勢が欠かせません。海外の巻き戻し事例は、過度な期待への警鐘として参考になります。

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参考・引用元