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物語・人物

やよい軒が磨いた品揃え×オペレーション

ボタンを押すと、白いごはんがふっくら盛られる

昼どきのやよい軒。定食を食べ終えた客が、空の茶碗を手に席を立ちます。向かう先は店の一角に据えられた銀色の機械です。茶碗をセットし、量のボタンを押すと、ごはんが自動でふっくらと盛られていきます。声をかける必要も、しゃもじを握る必要もありません。客は黙って茶碗を受け取り、席に戻ります。この「ごはんおかわりロボ」は、やよい軒のオペレーションを象徴する一台です。本稿では、公開された報道と公式情報をもとに、やよい軒が磨いてきた品揃えとオペレーションの設計を読み解きます。

事実の枠組み

やよい軒を運営するのは株式会社プレナスです。プレナス公式によれば、「やよい軒」という店名は、創業者・塩井末幸の祖父にあたる塩井民次郎が、1886年に東京・日本橋茅場町に開いた西洋料理店「彌生軒」に由来するとされています(出典: プレナス公式)。

現在のチェーンとしての起点は、1989年に福岡市博多区へ開いた「めしや丼」1号店です。2004年には東京・四谷に「やよい軒」1号店が開かれ、2006年に「めしや丼」が「やよい軒」へ名称統一されました(出典: Wikipedia)。

メニューの軸は、肉・魚・野菜をバランスよくとれる和の「定食」です。本格的な定食に加え、丼、麺類をそろえています(出典: プレナス公式)。

海外展開も進んでいます。フードリンクニュースによれば、やよい軒は2006年にタイで初出店し、2025年4月末時点で海外8カ国・地域に247店舗を展開、海外比率は4割を超えました。タイだけで189店舗を運営しています(出典: フードリンクニュース)。

運営会社プレナスは、2022年に創業家によるMBOで上場廃止となりました。フードリンクニュースは、MBOが2022年11月末に成立し、東証プライム市場から上場廃止になったと伝えています(出典: フードリンクニュース)。

物語の核

「おかわり自由」を支える一台

やよい軒の定食は、ごはんの「おかわり自由」を看板にしてきました。そのおかわりを非接触で実現したのが、ごはんおかわりロボです。プレナスは2020年6月、新しい生活様式に対応する取り組みとして、同ロボを全店へ順次導入すると発表しました(出典: プレナス プレスリリース)。

仕組みはシンプルです。茶碗をセットし、好みの量のボタンを押すと、ごはんが自動で盛られます。量は一口の50グラムから、小盛100グラム、並盛150グラム、中盛200グラムの4段階から選べます(出典: ITmedia NEWS)。

このロボには、ふんわり盛るための工夫が組み込まれています。ごはんを送り出すローラー部分の両サイドで回転スピードを変えることで、米をつぶさずに盛りつけるとされます(出典: がっちりマンデー note編)。

導入の背景には、衛生面の安心がありました。利用者はしゃもじの衛生状態を気にせず、声がけもなしに好みの量を盛れます。プレナスは、安全に「おかわり自由」を利用できるようにすることをねらいとして掲げました(出典: プレナス プレスリリース)。

券売機が引き受ける入口の処理

やよい軒の注文は、券売機での食券購入が基本です。先払いの食券システムを採り、追加注文も再び券売機で食券を買って店員に渡す流れです。この設計は、注文と会計の処理を入口に集約し、提供と片づけにスタッフの手を割けるようにしています。

2022年には券売機がリニューアルされました。ITmediaによれば、プレナスは2022年1月末までに新型券売機を導入し、クレジットカードやQRコード決済など支払い方法を大幅に拡充しました(出典: ITmedia Mobile)。

新券売機は、商品の視認性と選びやすさにこだわった大型タッチパネルを備え、ユニバーサルデザインを採り入れています。一画面により多くの商品を表示でき、客が快適に選べる設計です(出典: ITmedia Mobile)。

おかわりロボと券売機は、別々の装置でありながら同じ思想でつながっています。客が自分でできる工程は客に委ね、人手は人にしかできない部分へ振り向ける。その切り分けが、定食という手間のかかる業態を回す土台になっています。

品揃えとオペレーションの両立

やよい軒の難しさは、定食という品揃えの幅と、チェーンとしての回転を両立させる点にあります。定食は単品商売より構成要素が多く、ごはん・主菜・副菜・汁物がそろって一膳になります。品数が増えれば、提供と片づけの工程も増えます。

この業態で「おかわり自由」を掲げれば、本来はスタッフの往復が増えます。やよい軒は、その往復をロボに置き換えることで、おかわりの自由とオペレーションの軽さを同時に保ちました。品揃えを削るのではなく、提供工程の側を機械化したわけです。

海外展開でも、この設計は持ち運ばれています。フードリンクニュースによれば、インドネシア1号店は定食18種、重(丼)7種、うどん2種などでスタートしました(出典: フードリンクニュース)。定食を軸にした品揃えの型を、国をまたいで再現する形です。

経営者の声

やよい軒の取り組みは、プレナスの公式発信に表れています。

ごはんおかわりロボの導入について、プレナスは「新しい生活様式に対応した安心安全の取り組みを推進」すると掲げ、安全に定食のごはん「おかわり自由」を利用できるようにすることをねらいとしました(出典: プレナス プレスリリース)。

券売機リニューアルでは、プレナスは「現金要らずでスムーズに注文・会計」できるようにすることを掲げ、全国の店舗でキャッシュレス決済に対応させました(出典: プレナス プレスリリース)。

海外展開については、プレナスは「国内No.1定食チェーン」を掲げ、海外出店のノウハウを活かしてインドネシアで店舗拡大をめざすと発表しています(出典: プレナス プレスリリース)。

これらの発信は、品揃えの軸を保ちながら、注文・会計・おかわりという周辺工程を磨くという一貫した方向を示しています。

学べる示唆

やよい軒の設計は、定食のように工程の多い業態を運営する経営者に、いくつかの視点を与えます。

第一に、「客に委ねる工程」と「人が担う工程」を意識的に切り分けることです。やよい軒は、おかわりと注文・会計という反復作業を客側の操作に寄せ、提供と片づけに人手を残しました。すべてを機械化するのでも、すべてを人手で抱えるのでもない、中間の設計です。

第二に、看板サービスを維持するために周辺を機械化するという発想です。「おかわり自由」という価値を削らずに済んだのは、おかわりの提供工程をロボに置き換えたからでした。サービスの中身ではなく、その提供の仕方を見直す余地は、多くの店に残されています。

第三に、品揃えの型を移植可能な形に整えることです。定食を軸にした構成は、タイやインドネシアでも再現されています。自店の品揃えを「どこでも組み立て直せる型」として捉えられるかどうかは、多店舗化や事業承継を考えるうえで一つの分かれ目になります。

品揃えは広く、オペレーションは軽く。相反しがちな二つを両立させる工夫に、やよい軒の蓄積が表れています。

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参考・引用元