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物語・人物

日本のヴィーガンレストラン、5軒の取り組み

※本記事は公開情報をもとに再構成したものです。各店・各団体の記述は公開された一次情報・公式発表・公開インタビューの範囲に限っており、店舗の非公開の内部事情は含みません。一部の情景描写には複数の公開事例を合成した表現を含みます。

メニュー表に並ぶ「VG」の二文字

高層階のビュッフェ。並ぶ料理の札に、「VG」と「GF」の二文字が添えられています。ヴィーガンとグルテンフリーを示す記号です。かつては「特別対応」だったものが、いまや通常メニューの一部として並ぶ。この小さな表示の変化に、日本の外食をめぐる一つの潮流が現れています。

本稿では、日本のヴィーガン・プラントベース外食をめぐる動きを、5つの取り組みを軸に、公開情報で読み解きます。個店、大手ホテル、専門チェーン、そして認証団体と行政。それぞれの立ち位置から、同じ流れを見ていきます。

数字で見る背景――観光庁の推計

まず、動きの背景を公的データで押さえます。観光庁は飲食事業者向けの「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」を公開しています。

その資料等によれば、2018年の訪日外国人観光客のうち、ベジタリアン・ヴィーガンは約145~190万人、その飲食費は約450~600億円規模と推計されています。国・地域別で最も多かったのは台湾の64万人で、これは同年の訪日台湾人全体の14%にあたるとされます。「一部の特殊な客」ではなく、無視できない規模の市場が、すでに存在しているということです。

国内のプラントベース食品市場も拡大しています。公開された市場調査では、国内市場規模が2025年度に730億円に達するとの見込みも示されました。これは2020年度の265億円と比べて約2.7倍にあたります。外食だけでなく、小売や中食も含めた面で、プラントベースは裾野を広げています。

取り組み① 精進料理の名店――shojin 宗胡

一軒目は、伝統を軸にした事例です。東京・六本木の精進料理店「shojin 宗胡」は、公開情報によれば2015年にオープンした店です。オーナーシェフの野村大輔さんは老舗精進料理店の料理長を務めたのち独立し、伝統の技をベースに現代の感性を取り入れた料理を提供しています。

精進料理はもともと動物性食品を用いない料理体系であり、結果としてヴィーガンの条件と重なります。公開されたドキュメントでは、野村さんが植物性の料理を先導する世界のシェフを選ぶ「Plant Forward Global 50」に選ばれたとされています(うま味インフォメーションセンター)。だしに頼らず、昆布や植物性のうま味で料理を組み立てる手法は、ヴィーガン料理の一つの答えとして注目されてきました。

この事例が示すのは、「最新のトレンド」と思われがちなヴィーガンが、日本の伝統料理と地続きでつながっているということです。

取り組み② 大手ホテルの通常メニュー化――ホテルニューオータニ

二軒目は、大手ホテルの動きです。ホテルニューオータニ(東京)は、公式発表によれば2019年の「即位の礼 晩餐会」をきっかけに食の多様性への対応に力を入れ、「タワーレストラン」では大豆ミートなどのプラントベースフードを使ったメニューを2022年より展開してきたとされます。

2024年夏には、ホテル内の栄養士監修のもとで本格的なヴィーガンメニューをさらに拡充し、メニュー表に「VG」「GF」の表示を加えたと公表しています(ホテルニューオータニプレスリリース)。多様化するライフスタイルと訪日外国人の需要拡大を背景とした動きです。

大手ホテルが「表示」にこだわる点は示唆的です。提供するだけでなく、「どれがそうか」を客が一目で判断できるようにする。その安心設計こそが、対応の質を左右します。

取り組み③ 全国展開の専門チェーン――AIN SOPH.

三軒目は、ヴィーガン専門で複数店舗を展開する事例です。AIN SOPH.(アインソフ)は、公開情報によれば2009年より銀座、新宿三丁目、池袋、京都にヴィーガンレストランを展開し、2020年からはオンラインストアも始め、手作りのヴィーガンスイーツやプラントベースの食事セットを全国に届けているとされます。

京都の「AIN SOPH. Journey KYOTO」は、観光地としての集客力とヴィーガン需要を重ねた出店です。健康志向の客、海外からの旅行者、そして地元の客を取り込むことで、ヴィーガン専門という業態を複数店舗レベルで成り立たせています。単一店舗の実験を超えて、業態としての再現性を示した点に意義があります。

取り組み④ 街の専門店と地方都市――パプリカ食堂ヴィーガンほか

四軒目は、街に根づいた専門店の事例です。大阪をはじめとする各地に、ヴィーガンを名乗る専門店が生まれています。大阪の公開情報では、「パプリカ食堂ヴィーガン」などのヴィーガン専門店や、有機・ベジタリアン対応のカフェが紹介されています。帝国ホテル 大阪のように、クラシックホテルがヴィーガン特集を組む例も見られます。

さらに、自治体・観光団体の動きも見逃せません。大阪の公式観光サイトや都内の観光財団は、ヴィーガン・ベジタリアン対応店をマップや特集で紹介し、取得支援の補助金を用意しています。個店の努力を、行政が可視化と補助で支える構図です。

取り組み⑤ 認証とマップ――VegeProjectの仕組み

五軒目は、店ではなくそれを支える仕組みです。NPO法人ベジプロジェクト(VegeProject Japan)は、公開情報によれば2010年設立、代表は川野陽子さんです。大学・レストラン・自治体でのヴィーガンメニュー導入、認証マークの発行、マップ作成などを手がけてきました。

認証制度は、ヴィーガン基準を満たすメニューを提供する店に、見える形で信頼を与える仕組みです。同法人が公開する「東京ベジマップ」は、2023-2024年版で200軒以上のヴィーガンフレンドリーな店を掲載しています。店側が「うちは対応しています」と言うだけでは伝わらない信頼を、第三者の認証とマップが補っています。

5軒から読み取れるもの

五つの取り組みを並べると、店づくりのヒントが見えてきます。

第一に、「ゼロかイチか」で考えないことです。shojin 宗胡のような専門店もあれば、ホテルニューオータニのように通常メニューの一部として提供する道もあります。自店の業態に応じて、関わり方の深さを選べるということです。

第二に、「表示と信頼」が鍵になることです。VG表示や第三者認証は、提供そのものと同じくらい重要です。ヴィーガンの客にとって、「本当に動物性が入っていないか」は死活問題だからです。

第三に、「行政・団体のリソースを使う」ことです。観光庁のガイド、自治体の補助金、認証団体のマップ。これらは個店がゼロから背負うべきコストを下げてくれます。

ただし、トレンドに乗るだけでは意味がありません。ヴィーガン対応は、誤った表示が信用を一瞬で崩す領域でもあります。「できる範囲を正確に伝える」ことが、何よりの出発点になります。

表示一つに宿る姿勢

メニュー表の「VG」の二文字は、ただの記号ではありません。それは、その店が「あなたの食べられないものを理解しています」と伝える、一つの姿勢の表明です。精進料理の名店から大手ホテル、街の専門店まで、アプローチはさまざまです。それでも根っこにあるのは、「誰をもてなせるか」という問いです。

日本のヴィーガン外食は、まだ発展途上です。だからこそ、いま丁寧に表示と提供を整える店には、選ばれる余地が残されています。五軒の取り組みは、そのことを静かに示しています。

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参考・引用元