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梅雨の飲食店集客と仕込み調整|雨天の客足減対策と発注・売上管理の実務
梅雨は「客足が落ちる月」だと、なんとなく身構えていませんか。私も長く現場にいて、雨の日にホールがガラ空きになる感覚は身に染みています。ただ、数字を当たると見え方が変わります。東京の6月は年間で最も雨の日が多い月です。一方で6月下旬から夏のボーナスが入り、外食全体の売上は伸びます。つまり梅雨は「客足が読みにくい月」であって、単純な閑散期ではありません。本記事では、雨と来店の関係を出典付きで整理し、梅雨入り前から逆算した準備、雨天日の発注・仕込み・人員の調整、業態別の最適化までを現場目線でまとめます。
梅雨は本当に客足が落ちるのか — 数字で確かめる
まず気象から押さえます。気象庁の平年値(1991〜2020年)では、東京の6月の月間降水量は167.8mm、降水日数は8.5日です。この8.5日という数字は、実は年間で最も雨の日が多い月です。7月は156.2mm・8.0日とわずかに減ります(気象庁 東京の平年値)。月の3割前後が雨という前提で月間計画を組むのが、梅雨期の出発点です。
次に、雨が来店にどう効くか。シンクロ・フード(飲食店ドットコム)が2024年6月に433店へ実施した調査では、72.5%の店が「雨の日は来店数が少ないと感じる」と回答しています。立地別では商業施設内が最も雨に強く、業態別では「バー」が最も影響を受ける一方、フランス料理や懐石・会席は影響が30%台にとどまり、目的来店型は雨に強いことが示されました(PR TIMES シンクロ・フード調査)。現場では「雨が降ると客数が2〜3割減る」という声がよく聞かれますが、この振れ幅は立地・曜日・業態で大きく変わります(店サポ)。
ここで誤解を解いておきます。梅雨=売上減、ではありません。日本フードサービス協会の2025年6月度の市場動向調査では、外食全体の売上は前年比106.0%、客数は101.9%でした。記録的高温で冷たい麺類やビールが伸び、麺類は109.0%、喫茶は112.0%と好調だった一方、ディナーレストランは猛暑でシニア層の客足が鈍り101.6%にとどまっています(日本経済新聞 JFA 2025年6月調査、一般社団法人日本フードサービス協会 月次データ)。2025年は梅雨入りが東京で6月10日(平年6月7日)とやや遅く、6月下旬には西日本で記録的早さの梅雨明けとなりました(日本気象協会、気象庁 2025年6月の天候)。背景には、6月下旬から夏のボーナスが支給され、交際・外食費に回る構造があります(アスクル みんなのお仕事相談所)。
整理すると、梅雨期の本質はこうです。月の3割が雨で日次の客足が読みにくい。けれど月全体ではボーナスと猛暑で需要は底堅い。この「日次の凸凹」をいかに均すかが、梅雨を乗り切る肝になります。
梅雨入り前から逆算する準備タイムライン
雨の日対策が後手に回るのは、準備の着手が遅いからです。先のシンクロ・フード調査でも、天気予報を意識する店は85.6%、2〜3日先まで見る店は75.6%に上る一方、雨の日販促を「現在実施中」は7.2%、過去の実施経験を含めても26.4%にとどまります(PR TIMES)。多くの店が「予報は見るが、打ち手は用意していない」状態です。ここを埋めるため、梅雨入りの平年日(東日本は6月上旬)から逆算します。
6週前(4月下旬〜5月上旬)— 昨年の振り返り
昨年6〜7月の日別売上・客数・天候を並べ、雨の日に何がどれだけ落ちたかを確認します。POSがあれば天候と売上を突き合わせ、「雨の日はランチが落ちるが、デリバリーが伸びる」といった自店の癖を言語化します(マネーフォワード クラウド)。記録がなければ、今年の6月から日次でつけ始めます。
4週前(5月中旬)— メニューと販促の設計
梅雨限定メニューを固めます。湿度の高い時期は冷やし中華・冷製つけ麺・冷製パスタなどのさっぱり系が動きますが、冷房で体が冷える客層には温かい一品も必要です(テンポスフードメディア)。同時に「雨の日割」「ポイント増量」など、当日すぐ打てる販促を1〜2本だけ決め打ちします。打ち手は多すぎると現場が回りません。
3週前(5月下旬)— デリバリー・テイクアウト整備
天候が悪い日はデリバリー利用が増えます。Uber Eatsや出前館の登録、テイクアウト用の容器・メニューを今のうちに揃えます。事前注文・事前決済で待ち時間ゼロにすると、雨の日でも回転が落ちません。
2週前(6月上旬)— 仕入れ計画と発注見直し
雨予報の日の発注をどう減らすかを、食材ごとに決めます。発注点発注方式を使い、雨の日は発注点を一段下げる運用が有効です(飲食店ドットコム 仕入れ先探し)。生鮮は一次加工後の真空保管で歩留まりを守ります。
1週前(6月中旬)— 衛生とシフトの最終確認
高温多湿は細菌の温床です。冷蔵・温蔵の温度管理、手洗い、中心温度の確認手順を全員で再確認します(詳細は後述)。雨予報の日のシフトは、客足減を見込んで早番を1名薄くするなど「雨用シフトパターン」を作っておきます。
逆算で効くのは、結局「予報を見て当日慌てる」状態を卒業することです。2〜3日先の予報精度は実用域に達しており(気象庁)、前々日に発注・シフト・販促を動かせば、雨の日の損失はかなり抑えられます。
雨天日の具体的な施策 — 販促・発注・人員
雨の日販促は「即時性」と「一行」が命
雨の日販促で大事なのは、降り始めてから素早く届けることです。LINE公式アカウントは開封率が高く、ランチ前の11時、ディナー前の17〜18時に配信するのが効果的です。雨が降り始めて30分以内に「雨の日限定セット」「雨割10%OFF」を一行で伝えるのが理想とされます(just web)。条件は複雑にせず、当日限定の温かいセットやテイクアウト割を分かりやすく打ち出すだけで反応が変わります(ネットメディア)。
おもてなしも侮れません。入口に吸水マットを敷き、濡れた傘を預かって水滴を拭く、清潔なハンドタオルを差し出す。「お足元の悪い中ありがとうございます」の一言が、わざわざ雨の中を選んでくれた客との関係を強くします(just web)。
発注・仕込みは「予報連動」で歩留まりを守る
雨の日は廃棄ロスとの戦いです。仕入れの基本は、過去の実績から1日の使用量を出し、発注日数と予備在庫で適正量を算定すること。発注オーバーやオーバーポーションを減らすほど利益率が上がります(日清オイリオ 業務用)。雨予報の日は、足の早い生鮮の発注を一段絞り、日持ちする食材へ寄せます。1食材を複数メニューに使い回せる設計にしておくと、客足が読めない日でも廃棄を抑えられます。
ウェザーマーチャンダイジングの発想も使えます。気温と売れ筋には相関があり、アイスは25℃超で伸び、おでんは最低気温18℃以下で動き始めます(花王プロフェッショナル)。梅雨は気温の上下が激しいので、予報の気温帯に合わせて冷温メニューの仕込み比率を前日に調整します。ウェザーニューズの来店客予測は月間で95%以上の精度を実現し、発注システムやシフト管理に自動連携している事例もあります(ウェザーニューズ)。ここまでの仕組みがなくても、「予報→発注→シフト」を手動で連動させるだけで効果は出ます。
人員は「薄く構え、デリバリーに振る」
雨で来店が減る日は、ホールを薄く構えます。ただ完全に絞ると、急な団体や雨上がりの来店に対応できません。客数が落ちる分の人手を、テイクアウト・デリバリーの調理側に回す発想が有効です。雨の日に客足が落ちてもデリバリーが伸びるなら、予測に基づいてシフトを組むことで人件費の無駄を抑えつつサービスの質を保てます(マネーフォワード クラウド)。
高温多湿の食中毒リスクを甘く見ない
梅雨は衛生事故が増える季節です。細菌性食中毒は6〜8月に集中し、原因菌ではカンピロバクターが突出しています(2021〜2025年の5〜8月で360件)。多くの食中毒菌は20〜50℃で増えるため、冷蔵は極力低温、温蔵は65℃以上で保ち、加熱は中心温度75℃で1分以上が目安です(MHCL WORKS LABO)。雨の日に来店が減ると仕込みが余りがちですが、「もったいないから翌日持ち越し」が事故の入口になります。発注を絞って使い切る運用こそ、衛生面でも正解です。
業態別の最適化 — 雨の効き方は同じではない
雨の影響は業態でまるで違います。手を打つ順番も変わります。
居酒屋・バー — 最も雨に弱い業態です(PR TIMES)。通りすがりの一見客が減るので、予約客とリピーターの比率を上げるのが本筋です。雨の日の「生ビール1杯無料」「3名以上でおつまみサービス」など、来店動機を一行で作ります。JFAでもパブ・居酒屋は梅雨期でも堅調な業態で、低価格の打ち出しが効きます(日本経済新聞)。
オフィス街のランチ業態 — 雨だと社員が社食やコンビニに流れます(テンポスフードメディア)。事前注文・事前決済のテイクアウトで「濡れずに買える」導線を作るのが効きます。雨の日のランチは数量を絞り、廃棄を出さない設計が利益を守ります。
住宅街のカフェ・レストラン — 徒歩や自転車の主婦層・高齢者の来店が減ります(テンポスフードメディア)。デリバリーやテイクアウトで自宅需要を取りに行きます。温かいスープや鍋など「雨の日だからこそ」のメニューが満足度を上げます。
商業施設内 — 最も雨に強い立地です(PR TIMES)。傘をささずに来られるため、むしろ雨の日に館内の回遊客を取り込めます。雨の日限定の館内向け告知で、他店から客を引き寄せます。
ディナーレストラン・高単価業態 — 目的来店が中心で、雨そのものには比較的強い一方、2025年6月は猛暑でシニア層が減りました(日本経済新聞)。予約のリマインドを丁寧に行い、当日キャンセルを減らすのが最優先です。
ビアガーデン・屋外席 — 雨に最も振り回されます。屋根付き・テント席への切り替えや、雨天時の屋内席への振替を予約段階で用意しておくのが必須です(ビール女子)。梅雨期は屋外単独で組まず、屋内併設で計画を立てます。
よくある失敗と回避策
失敗1:予報は見るが打ち手がない
85.6%が予報を見るのに、販促を用意しているのは7.2%という乖離が現実です(PR TIMES)。回避策は単純で、雨の日販促を1〜2本だけ事前に決め打ちし、テンプレ化しておくことです。
失敗2:雨の日に発注を絞らず廃棄を出す
客足が読めないからと例年通り発注し、雨で来店が減って大量廃棄、というのが典型です。発注点を雨予報の日だけ一段下げる運用で防ぎます(飲食店ドットコム)。
失敗3:余った仕込みを翌日へ持ち越す
高温多湿期にこれをやると食中毒リスクが跳ね上がります。中心温度75℃・1分の加熱、65℃以上の温蔵を守り、持ち越し前提の仕込みをしないことです(MHCL WORKS LABO)。
失敗4:値引きだけで疲弊する
雨割を打っても、実施店の31.6%しか「効果あり」と感じていません(PR TIMES)。値引き一辺倒ではなく、限定メニューやおもてなしで「来てよかった」を作る方が、長く効きます。
失敗5:人員を絞りすぎて機会損失
雨でも雨上がりや団体は来ます。ホールを薄くしつつ、人手をデリバリー調理に振り替える二段構えが安全です。
雨天日オペレーションのチェックリスト
雨予報を確認した前日〜当日に、以下を回します。
振り返りと翌年への記録
梅雨対策は、その年で終わらせると毎年ゼロからになります。雨の日の売上・客数・注文内容を日次で記録するだけで、翌年の精度が上がります(テンポスフードメディア)。POSがあれば天候と売上を突き合わせ、「自店は雨で何が落ち、何が伸びるか」を数字で持っておきます(マネーフォワード クラウド)。
梅雨が明ければ、7月下旬には土用の丑の日が控えます。2025年は7月19日と7月31日の二の丑があり、梅雨明けと重なる商戦期です(JAL SKYWARD+)。梅雨の振り返りデータは、そのまま盛夏・夏休み商戦の発注計画に活きます。記録は来年の自分への引き継ぎ書です。今年の6月から、雨の日の数字をつけ始めてください。
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📖 さらに深く知る(第3弾より)
参考・引用元
- 気象庁「東京(東京都)平年値(年・月ごとの値)」 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=44&block_no=47662
- 気象庁「2025年6月の天候」 https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/monthly/202506/202506m.html
- 日本気象協会「2025年梅雨入りは関東甲信で平年よりやや遅く10日」 https://weather-jwa.jp/news/topics/post5593
- 日本経済新聞「日本フードサービス協会、6月の外食産業市場動向調査結果を発表」 https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP694514_V20C25A7000000/
- 一般社団法人日本フードサービス協会 2025年6月度 月次データ https://www.jfnet.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/09/getujidata-2025-06.pdf
- PR TIMES(シンクロ・フード)「梅雨入り直前・飲食店の『雨の日対策』調査」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000609.000001049.html
- 店サポ「雨の日に飲食店の客足が減る理由」 https://misesapo.jp/archives/6741
- テンポスフードメディア「飲食店の『雨の日』の客数・オペ・売上はどう変わる?」 https://foodmedia.tenpos.com/management/42040/
- テンポスフードメディア「梅雨明けに食べたい旬の食べ物」 https://www.tenpos.com/foodmedia/newstrend/trend/40215/
- just web「雨の日の飲食店集客術」 https://www.justweb.co.jp/itogo/column/amenohi_hansoku/
- ネットメディア「雨の日集客を成功させる飲食店の戦略5選」 https://net-media.jp/news/3794/
- MHCL WORKS LABO「梅雨ごろから夏場に急増する細菌性食中毒について」 https://www.mhcl.jp/workslabo/hatena/tsuyu
- ウェザーニューズ「小売・飲食事業者向けに『来店客予測データ』を提供開始」 https://jp.weathernews.com/news/44533
- 花王プロフェッショナル「ウェザーマーチャンダイジング」 https://pro.kao.com/jp/food-biz-support/management/business-column/033/
- 飲食店ドットコム 仕入れ先探し「発注点発注の導入」 https://www.inshokuten.com/supplier/knowledge/detail/197
- 日清オイリオ 業務用「飲食店の食材コスト削減法」 https://foodservice.nisshin-oillio.com/library/2024-009/
- マネーフォワード クラウド「飲食店のデータ活用」 https://biz.moneyforward.com/restaurant/basic/2579/
- アスクル みんなのお仕事相談所「ニッパチとは?飲食店の閑散期と対策」 https://www.askul.co.jp/f/special/product_column/28/
- ビール女子「雨でも快適に楽しめるビアガーデン」 https://beergirl.net/beergarden-rain_c/
- JAL SKYWARD+「2025年の土用の丑の日」 https://skywardplus.jal.co.jp/plus_one/calendar/oxday/
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