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季節イベント

お盆の飲食店営業はどう判断する?立地別の繁忙・閑散とデータで読む営業日の決め方

お盆は、飲食店の経営者にとって一年で最も判断が割れる時期です。同じ8月でも、オフィス街の店は客足が消え、観光地やロードサイドの店は満席が続きます。「開けるか、休むか」「人をどう確保するか」を、立地と業態から逆算して決める。この判断を毎年なんとなくの勘で繰り返すと、片や赤字営業、片や機会損失で取りこぼします。本記事では、お盆の市場の実態を出典付きで押さえたうえで、何週間前に何を準備するかを具体的なタイムラインで整理します。

お盆の外食市場は「全体は好調、しかし二極化」が実態です

まず数字で全体像を掴みます。総務省の家計調査では、外食の月別支出が最も多いのは8月です。1か月あたりの平均を上回り、次いで12月、1月、5月と続きます。夏休みや年末年始など連続した休日が多い月に外食支出が増える傾向が、長期データから確認できます(総務省統計局 家計調査通信)。一年で最も外食にお金が動く月、それが8月です。

外食支出の地力そのものも上がっています。同じく家計調査をもとにした集計では、一般外食の1世帯当たり年間支出は2024年に179,992円となり、前年比9.0%増、3年連続の増加で2000年以降の最高水準でした(総務省 家計調査/GD Freak集計)。2022年は138,066円、2023年は165,149円ですから、コロナ後の2年で大きく伸びた計算です。お盆の追い風はこの土台の上に吹いています。

ただし「全体が好調」を自店の好調と読み違えると危険です。日本フードサービス協会の市場動向調査では、2025年8月度の外食全体の売上は前年比108.4%でした。客数103.9%、客単価104.4%と堅調です。報告書はその要因を「お盆の帰省需要などが好調」としつつ、「夏休みの行楽や観光需要は立地によって天候に左右された」と明記しています(日本フードサービス協会 2025年8月度市場動向調査、2025年9月25日発表)。鍵は「立地」です。お盆は需要が増えるのではなく、需要が移動します。

人がどれだけ動くかは旅行統計に出ます。農林水産省が家計調査と観光統計をまとめた資料では、国内旅行者数は8月が一年で突出して多く、2023年7月〜2024年6月期の8月は3,603万人(前年比112%)に達しました(農林水産省 消費動向資料)。道路も同様です。NEXCO各社の2024年お盆の渋滞予測では、期間中の平均日交通量が前年比107%、10km以上の渋滞回数は135%と見込まれました(お盆渋滞予測2024)。この人流が、都心のオフィス街から地方・観光地・郊外へ移る。これがお盆の本質です。

準備は「お盆の8週間前」から逆算します

お盆の準備で最も多い失敗は、7月下旬に慌てて動き出すことです。短期スタッフの募集も予約の仕込みも、その時期では遅すぎます。逆算でタイムラインを引きます。2025年を例にすると、お盆の中心は8月13日(水)〜16日(土)、企業の休みは13日〜17日が多く、山の日(8月11日)と有給を組み合わせると最長9連休になります(2025年お盆休み/ALSOK)。連休の山がどこに来るかで、自店の繁忙日と閑散日が決まります。

8週間前(6月中旬)— 人の確保を始める。 夏の短期アルバイトは、夏休みに入る1〜2ヶ月前から募集するのが定石です。求職者の検討期間は1〜2ヶ月とされ、競合の求人が増える6月に出さないと、お盆に欠員が出ます(夏休みバイト採用のコツ/ヒトクル)。同時に既存スタッフへ帰省・旅行の予定を聞き、シフトの穴を可視化します。学生が多い店ほどこの確認は早く済ませます。

6週間前(6月末〜7月初)— 営業日を決める。 ここが最大の意思決定です。判断材料は固定費と立地です。家賃や人件費といった固定費は、休んでも消えません。損益分岐点比率(売上に対する分岐点の割合)は飲食店で80〜90%が目安とされ、これが高い店は数日の閑散でも赤字に沈みます(損益分岐点の考え方/POS+)。前年同月の日別売上を見て、客単価×想定客数が変動費(食材・人件費の増分)を割るなら、その日は休業か短縮が合理的です。

4週間前(7月中旬)— メニューと販促を固める。 夏限定メニュー、家族向けの設計、予約導線を準備します。仕入れ業者にもお盆の発注量と納品スケジュールを早めに共有します。お盆は業者側も休むため、納品が止まる日を先に潰しておきます。

2週間前(7月末)— 人員配置とオペレーションを詰める。 繁忙日・閑散日それぞれのシフトを確定し、ピーク時の役割分担、仕込み量、在庫の発注ロットを決めます。来客予測に基づき、その日に使う分だけ仕込む発注設計が、繁忙日の品切れと閑散日の食材ロスを同時に防ぎます。

1週間前— 最終確認。 予約状況、人員、仕入れ、現金準備、券売機やレジの釣銭を点検します。閑散日の販促(後述)もこの段階で告知を打ち切り、当日に集中します。

具体的施策はメニュー・販促・人員の三点で組みます

タイムラインの中身を具体化します。まずメニューです。8月は猛暑で冷たいメニューとビールが動きます。実際、2025年8月の麺類業態は冷たいメニューとビールの販促で売上110.0%、喫茶業態は夏用ドリンクの投入もあり110.9%でした(日本フードサービス協会)。冷製、ビアセット、子ども向けプレートを前面に出します。

販促は「期間限定」で目玉を作ります。閑散になりがちな立地では、先払いを取り込む設計が効きます。例えば一定額の前払いで期間中ドリンク無料といったサブスク型、小学生以下同伴で子どもの飲み物無料といった家族向け、原価の低い樽生ビールを使った1杯特価などです(8月閑散期対策/店サポ)。先払い金は閑散日の固定費を先に回収する効果があります。

人員は「繁忙日に厚く、閑散日に薄く」を徹底します。お盆は帰省や旅行でスタッフ自身が抜けやすく、求人も競争が激しくなります(お盆の人手不足/バイトル)。短期スタッフの早期確保に加え、緊急招集の連絡テンプレートと代替要員リストを事前に作っておくと、当日の欠員に即応できます。

業態と立地で「正解」はまったく違います

ここが本記事の核心です。同じお盆でも、打つ手は店のタイプで反転します。

オフィス街・繁華街(ビジネス需要中心)。 最も売上が落ちる立地です。お盆は営業日の減少だけで月売上が2割減る計算になり、加えてお盆前は取引先の締めが重なって客足が鈍り、帰省後は往復交通費の出費で財布が固くなります(8月に売上が落ちる理由/店サポ)。ここは無理に通常営業せず、休業日を集約して固定費を抑えるか、近隣に残る層(出張者・在宅勤務者)を狙った絞り込み営業が現実的です。

観光地・行楽地。 お盆が一年の山です。需要が立地に移動してくる側ですから、客席稼働率を最大化する設計に振り切ります。回転率の管理、予約とウォークインの配分、メニューの提供スピードが売上を左右します。ディナーレストラン業態が2025年8月に110.8%と伸びた背景にも、お盆帰省・夏休み需要と、大阪では万博のプラス影響がありました(日本フードサービス協会)。

ロードサイド・郊外(ファミリー需要)。 帰省家族の外食が集中します。2025年8月のファミリーレストランは全体109.8%、なかでも和風112.2%、焼き肉106.5%と堅調で、回転寿司もお盆期間の集客が好調な店がありました(日本フードサービス協会)。三世代での来店を見込み、客席のレイアウトと子ども連れ対応を整えると単価が伸びます。

居酒屋・パブ。 天候に売上が大きく振られます。2024年は大型台風で予約キャンセルが相次ぎましたが、2025年は天候に恵まれ、連日の猛暑でビールが伸びて売上109.1%でした(日本フードサービス協会)。台風シーズンと重なるため、悪天候時のキャンセル規定と予約の前金設計を決めておきます。

よくある失敗と回避策を先に潰します

毎年繰り返される失敗には型があります。

第一に、前年の感覚だけで営業日を決める失敗。 2024年と2025年では曜日まわりも天候もまったく違いました。日別の実績データを見ずに「去年休んだから今年も」では、稼げる日を捨てます。

第二に、短期スタッフの募集が遅れる失敗。 7月に入ってから動くと、6月に出した競合に人を取られます。GW明けから6月に募集を始めるのが鉄則です。

第三に、仕入れの読み違い。 お盆は業者も休みます。納品が止まる日を把握せず通常通り発注すると、繁忙日に食材が切れます。逆に閑散日に多く仕込むと食材ロスになります。来客予測に基づく日別の発注設計が必須です。

第四に、閑散日にも通常の人員を入れる失敗。 オフィス街で客が消える日にフルシフトを組むと、人件費だけが残ります。閑散日は最小人員、繁忙日に集中投下が原則です。

第五に、当日の現金・釣銭不足。 家族客や行楽客は現金利用も多く、釣銭切れは回転を止めます。連休前に多めに準備します。

当日オペレーションのチェックリスト

繁忙日に印刷して使える形で並べます。

開店前にシフト全員の出勤を確認、欠員時は連絡テンプレートで即招集する
当日の予約一覧と席配置を共有し、ウォークインの受け入れ枠を決める
仕込み量を来客予測に合わせ、品切れと過剰仕込みの両方を防ぐ
ピークタイムの役割分担(調理・配膳・会計・案内)を口頭で再確認する
冷製メニューとビール類の在庫、ドリンクの冷却状況を点検する
レジ釣銭・現金を多めに準備し、キャッシュレス端末の通信を確認する
猛暑日は店内空調と入口の待ち列対策(日除け・水・整理券)を整える
閉店後にその日の客数・客単価・売上を記録し、翌日の発注に反映する

振り返りと翌年への記録が、来年の利益を作ります

お盆が終わったら、必ずその場で記録を残します。日別の売上・客数・客単価、天候、予約数とキャンセル数、人員の過不足、品切れの有無、販促の反応。これを残すかどうかで、翌年の判断精度が決まります。

売上は前年同月比や移動平均で眺め、連休や天候に引きずられず構造の変化を見ます。売上が落ちた日も、客数が横ばいで単価が落ちたのか、客数自体が減ったのかで打つ手は変わります。年間を月別・曜日別・時間帯別に分解すれば、自店の季節指数が見え、仕入れリスクも下げられます(繁忙期の売上分析/Square)。お盆の数字を毎年積み上げると、「何日に何人来て、何を仕込み、何人で回すか」が勘から数字に変わります。これが時節商戦で勝つ店と取りこぼす店の差です。

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参考・引用元


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