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人手不足

シフトの組み方が離職率を決める理由|飲食店スタッフが続く組み方

先月まで普通に入っていたスタッフが、特に揉めたわけでもないのに「来月で辞めます」と言ってくる。理由を聞いても「なんとなく」「家の都合で」とだけ返ってくる。原因が見えないまま、また求人を出す。多くの店長が経験するこの「理由の言えない離職」は、実はシフトの組み方に原因が隠れていることが少なくありません。

この記事では、シフト設計がなぜ定着率を左右するのかを整理し、希望シフトの扱い方、連勤や深夜の偏りの直し方、公平性と予見可能性のつくり方を具体的に解説します。最後にそのまま使えるチェックリストと、希望の通り具合を数字で見る計算式も載せます。読み終えたとき、明日のシフト表で変えられる一歩が見つかるはずです。

🗓️ シフト設計は店長が最もコントロールできる定着レバー

人が辞める理由はさまざまですが、店長が自分の裁量で動かせる要素は限られます。給与テーブルは本部が決め、人間関係は一朝一夕には変わりません。その中でシフトは、店長が毎週自分の手で設計できる数少ない領域です。

給与や立地より「動かせる」のがシフト

時給の引き上げには予算の承認が要り、立地は変えられません。一方シフトは、誰をいつ何時間入れるかを毎週決め直せます。つまり定着に効くレバーの中で、最も反応が速く、コストもかからないのがシフト設計です。ここを丁寧に扱うだけで、離職の数本は確実に減らせます。

飲食業の離職率の高さという前提

厚生労働省「令和5年雇用動向調査」によると、宿泊業・飲食サービス業の離職率は26.6%で、全産業平均の15.4%を大きく上回ります。パートタイム労働者に限ると31.9%です。新規学卒の3年以内離職率(令和4年3月卒)も大卒55.4%・高卒64.7%と全産業で最も高い水準でした(出典:厚生労働省)。母数として辞めやすい業界だからこそ、コントロールできるシフトで踏みとどまる効果は相対的に大きくなります。

「理由の言えない離職」が示すもの

退職理由として語られにくいのが、シフトへの不満です。「希望が通らない」「連勤がきつい」「自分ばかりヘルプに呼ばれる」といった不満は、一つひとつは小さく、面と向かって言いにくい。だから本人も「なんとなく」としか説明できません。退職理由が曖昧なときほど、シフトの偏りを疑ってみる価値があります。

⚖️ シフトが雑だと人が辞める4つのメカニズム

シフトが定着を下げるとき、そこには決まったパターンがあります。代表的な4つを押さえておくと、自店のどこが弱いかが見えてきます。

希望シフトが軽く扱われる

提出した希望が毎回のように削られると、「出しても無駄」という感覚が生まれます。とくに学業や育児、ダブルワークの予定を崩されると、生活そのものが回らなくなる。希望は100%通せなくても、なぜ通せなかったかを一言添えるだけで受け止め方は変わります。沈黙のまま削るのが一番こたえます。

連勤・深夜・週末がいつも同じ人に偏る

「断らない人」「言いやすい人」に負担が集まるのは、シフト作成でよく起きる現象です。週末の遅番や連勤が特定の数人に固定されると、その人たちが先に疲弊して抜けていきます。負担の重いコマこそ、台帳をつけて全員に回す意識が要ります。

公平感が崩れる

人は自分の損より、隣の人との差に敏感です。同じ立場なのに楽なシフトの人がいると感じた瞬間、不満は一気に高まります。実際に公平でも、説明がなければ不公平に見えます。基準を言葉にして共有しておくことが、無用な火種を防ぎます。

予定が直前まで読めない

シフト確定が前週末ぎりぎりだと、スタッフは私生活の予定を立てられません。友人との約束も、副業のシフトも、病院の予約も入れにくい。この「読めなさ」は、本人が思う以上にストレスとして蓄積します。確定を数日早めるだけで、働きやすさの体感は変わります。

🙋 希望シフトの尊重は「全通し」ではなく「説明」

希望を全部通すのは現実的ではありません。大切なのは通す割合そのものより、通らなかったときの扱い方です。

全部は通せないという現実を共有する

営業に必要な人数は決まっており、希望が重なれば必ず誰かが外れます。これは店長の意地悪ではなく構造です。採用や面談の段階で「希望は最大限尊重するが、全通しは約束できない」と先に伝えておくと、後の不満はぐっと減ります。

「通らなかった理由」を一言添える

削るなら、理由をセットにします。「土曜は応募が集中したので今回は外しました。次回は優先します」の一文があるだけで、納得感はまるで違います。理由なき削りは、軽視されたという記憶だけを残します。

マスト休みと優先希望を分けて集める

希望を一律に集めると、絶対に外せない予定と「できれば」が混ざります。「絶対休みたい日(マスト)」と「できれば入りたい/休みたい(優先)」を分けて出してもらうと、組む側は判断しやすく、本人も大事な予定を守れます。この一手間が、すれ違いを大きく減らします。

💡 希望シフトの収集や調整を紙やチャットで続けると、誰の希望をどれだけ通したかが見えにくくなります。最近はスマホで希望を集め、通過状況を可視化するシフト管理ツールも増えています。仕組みで支えると、店長の感覚頼みから抜け出しやすくなります。

🔁 連勤・深夜・週末の偏りをならす設計

負担の偏りは、放っておくと自然に悪化します。意識して「ならす」操作を入れることが、特定の人の燃え尽きを防ぎます。

連勤の上限を先に決める

何連勤までを許容するかを、店として先に決めておきます。労働基準法では法定休日として週1日(または4週で4日)の休日が必要です(労基法35条)。法令はあくまで最低ライン。実務では「5連勤を超えない」など、もう少し手前に自店の上限を置くと安全です。

深夜帯の担当を回す

深夜22時から翌5時の労働には25%以上の割増賃金が必要で(労基法37条)、体への負担も大きい時間帯です。同じ人に深夜が固定されないよう、月単位で担当を入れ替える運用にします。割増のコスト管理と、健康面の配慮を同時に進められます。

週末の「おいしいコマ」と「きついコマ」を台帳で管理

週末は売上の山で、稼ぎたい人気のコマと、誰もが避けたいきついコマが混在します。どちらも特定の人に寄りがちなので、誰がいつどのコマに入ったかを台帳に残し、数週間単位で均す意識を持ちます。記録があれば、不満が出たときに事実で説明できます。

休憩を確実に取らせる

労働時間が6時間を超えると45分、8時間を超えると60分の休憩を与える義務があります(労基法34条)。忙しさで休憩が飛ぶ店は、それ自体が離職要因です。ピーク時間とコマ割りを設計する段階で、休憩を取れる人員配置にしておきます。

🍻 業態によって「効くシフト設計」は変わる

同じ飲食でも、業態が違えばシフトの勘所はまったく違います。自店の型に合った設計に寄せることが大切です。

居酒屋・バーは深夜と週末の偏り対策が肝

営業が夜と週末に偏るため、負担の重いコマが構造的に発生します。深夜担当のローテーションと、金土の連続出勤の上限管理が定着の分かれ目になります。ここを台帳で回せるかどうかが効いてきます。

カフェ・ファストフードは短時間多数の調整

短時間勤務のスタッフが多数を占めるため、希望の組み合わせが複雑になります。15分・30分単位の細かい調整が増え、組む手間そのものが負担になりがちです。学生の試験期間など、生活サイクルの波を読んで先回りする視点が役立ちます。

ラーメン・個人店は少人数固定ゆえの代替確保

少人数で回す店は、一人の欠勤が即シフト崩壊につながります。一人ひとりへの負担が重いぶん、誰かが抜けても回せる代替要員や、ヘルプの当てを普段から確保しておくことが定着の前提になります。固定メンバーほど、無理の蓄積に気づきにくい点にも注意が要ります。

フレンチ・通し勤務の店は拘束時間の納得感

仕込みから営業まで通しで入る業態は、拘束時間が長くなりがちです。長時間そのものより、その長さに見合う待遇や中抜け休憩の運用に納得感があるかが鍵になります。休憩時間を実態として確保できているかを、定期的に見直す価値があります。

⏰ 予見可能性をつくる「早めの確定」

シフトがいつ確定するかは、働きやすさの体感を大きく左右します。仕組みで早めに固める工夫が効きます。

確定タイミングを固定し、前倒しする

「毎週〇曜日までに翌週分を確定」と、締めと確定の曜日を固定します。可能なら確定を数日前倒しし、スタッフが私生活の予定を組める余白を残します。タイミングが読めること自体が、安心材料になります。

基本シフトを土台にする

毎回ゼロから組むと時間もかかり、ブレも出ます。曜日ごとの必要人数とレギュラーメンバーを「基本シフト」として固定し、そこに希望と変動を足し引きする方式にすると、作成は速くなり確定も早まります。土台があるほど、属人的な偏りも起きにくくなります。

急な変更のルールを決めておく

どれだけ整えても、欠勤や予約集中による変更は起きます。「変更依頼は誰に、いつまでに、どう連絡するか」をあらかじめ決めておくと、当日の混乱が小さく収まります。ルールがあること自体が、現場の安心につながります。

✅ 実践1:シフト公平性チェックリスト

今のシフト運用に公平性の穴がないか、以下の項目で点検してみてください。当てはまらない項目が、改善の手がかりになります。

  • 希望シフトを毎回きちんと集めているか(口頭任せにしていないか)
  • 「マスト休み」と「優先希望」を分けて受け付けているか
  • 希望を削ったとき、理由を本人に伝えているか
  • 連勤の上限を店として決め、運用できているか
  • 深夜帯の担当を特定の人に固定していないか
  • 週末の人気コマ・きついコマが偏っていないか台帳で確認しているか
  • ヘルプ要請が同じ人に集中していないか把握しているか
  • 休憩を時間どおり取れる人員配置になっているか
  • シフト確定の曜日が決まっていて、守れているか
  • 新人とベテランの習熟度バランスが各コマで取れているか

8項目以上にはっきり「はい」と言えるなら、土台はできています。半分を切るようなら、まずは希望の集め方と連勤上限の2つから手をつけると効果を実感しやすいはずです。

🔢 実践2:希望シフト通過率を数字で見る

公平さを感覚で語ると水掛け論になります。希望がどれだけ通っているかを、簡単な数字にしてみます。

計算式

希望シフト通過率(%) =(希望どおり組めたコマ数 ÷ 申請されたコマ数)× 100

「コマ」は1回の出勤(または休み希望)の単位です。スタッフが出した希望のうち、何件を希望どおりにできたかを割合で出します。

計算例

あるスタッフが1か月で「この日に入りたい/休みたい」を計20コマ申請したとします。そのうち16コマを希望どおりに組めたなら、通過率は(16 ÷ 20)× 100 = 80%です。これを店全体やスタッフ別に出すと、誰の希望が通りにくいかが一目で見えます。

数字をどう使うか

通過率は高ければよいというものではありません。全員100%は人員配置が破綻している可能性すらあります。目安として店全体で70〜80%を保ちつつ、特定の人だけ極端に低くないかを見ます。月ごとに記録すれば、改善が効いているかも追えます。数字は責めるためでなく、偏りに気づくために使うのが肝心です。

まとめ:明日から動ける一歩

シフトは、店長が自分の手で毎週変えられる、最も反応の速い定着レバーです。希望の扱い・偏りの是正・公平性・予見可能性の4点を意識するだけで、「理由の言えない離職」は確実に減らせます。

  • 希望は全通しでなくてよい。通らなかった理由を一言添えることから始める。
  • 連勤・深夜・週末の偏りは台帳で見える化し、特定の人への集中を崩す。
  • 確定の曜日を固定し、通過率を数字で月ごとに振り返る。

まずは次のシフトで、希望を「マスト休み」と「優先希望」に分けて集めるところから試してみてください。組む側の判断が軽くなり、スタッフの納得感も上がる、最も小さく始められる一歩です。


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