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数値経営

経営者のキャッシュ目線|飲食店で利益と現金のズレを埋める

「利益は出ているはずなのに、なぜか口座のお金が増えない」。多くの飲食店オーナーが一度は抱く感覚です。これは経営が下手だからではなく、利益と現金が別物だという仕組みを知らないだけのことが少なくありません。会計上の利益は、必ずしも手元の現金とは一致しません。このズレを放置すると、黒字なのに資金が尽きる「黒字倒産」につながります。この記事では、利益と現金がずれる理由をやさしく解きほぐし、経営者が持つべきキャッシュ目線と、明日から始められる現金管理の一歩を紹介します。

なぜ「利益」と「現金」は一致しないのか

利益は会計のルールで計算された数字であり、お金が動いた事実とは別に記録されます。この前提を押さえると、口座残高との食い違いに納得がいきます。

利益は「ルール上の計算結果」

損益計算書の利益は、収益と費用を一定の決まりで対応させて出した数字です。お金が出ていったかどうかとは無関係に計上される項目があり、ここが現金とずれる出発点になります。「勘定合って銭足らず」という言葉は、この状態を指しています。

現金は「実際に動いたお金」

一方、現金は口座や手元にある実際のお金です。仕入れの支払いや借入の返済でお金が出ていけば、利益が黒字でも残高は減ります。経営者が日々向き合うべきは、この実際に動くお金の流れです。

利益と現金のズレが生まれる4つの場面

ズレは特別なことではなく、通常の営業のなかで自然に発生します。飲食店で起きやすい代表的な4場面を見ていきます。

借入金の返済

返済額のうち元本部分は、費用ではないため利益を減らしません。しかし現金は確実に出ていきます。月20万円返済していても、利益計算に反映されるのは利息分だけです。元本返済は利益に見えないまま現金を削る、最も見落とされやすい項目です。

設備投資と減価償却

厨房機器や内装に大きな投資をすると、その年に全額が費用になるわけではありません。費用は減価償却として数年に分けて計上される一方、お金は購入時に一括で出ていきます。投資直後は、利益が出ていても現金が大きく減ります。

在庫と仕入れのタイミング

食材の仕入れ代金を先に払い、売上として回収するのは後になります。まとめ買いやイベント前の仕込みで在庫が増えると、その分の現金が在庫に姿を変え、手元から消えます。

税金の支払い

利益が出れば、後から法人税や消費税の納付が来ます。納税資金を別に確保していないと、決算後にまとまった現金が一度に出ていき、資金繰りが一気に苦しくなります。

黒字倒産を防ぐキャッシュ目線

利益の数字だけを見ていると、足元の現金の細りに気づけません。経営者は利益と現金の両方を、別の指標として追う必要があります。

「現金がいくら動いたか」を毎月見る

月次では、利益だけでなく月初と月末の現金残高を比べる習慣をつけます。利益が黒字でも残高が減っているなら、どこかで現金が出ていっています。返済、投資、納税のどれが原因かを切り分けます。

手元現金は「最低1.5〜2カ月分」を目安に

突発的な売上減や設備の故障に備え、月の固定費の1.5〜2カ月分を手元に置いておくと安心です。客足が天候や季節に左右されやすい飲食店では、この備えが資金ショートを防ぐ盾になります。

納税・返済の予定を先に書き出す

大きな現金が出ていく日を、年間カレンダーに先回りで書き込みます。納税月や賞与月、返済の据置期間が終わる月をあらかじめ見える化すれば、慌てて借りる事態を避けられます。

業態で異なる資金繰りのクセ

現金の動き方は業態によって違います。自店のパターンを知ると、備えるべきポイントが定まります。

居酒屋・ダイニング

宴会シーズンと閑散期の差が大きく、売上の波が資金繰りに直結します。繁忙期に得た現金を使い切らず、閑散期の固定費に回す資金繰りの設計が欠かせません。

カフェ・喫茶

客単価が低く、日々の現金は小口で積み上がります。大きな波は少ない一方、利益率が薄いため、設備更新や家賃改定といった一時的な現金流出に弱い面があります。

ラーメン・定食店

現金商売で日銭が入りやすい反面、原価率が高く粗利が薄くなりがちです。仕入れの支払いサイトと売上回収のタイミングを意識し、手元現金を厚めに保つと安定します。

フレンチ・コース主体店

予約ベースで売上が読みやすい一方、食材原価が高く、ワインなどの在庫に現金が寝やすい業態です。在庫を持ちすぎないことが、現金を手元に残すコツになります。

まとめ

  • 利益は会計上の計算結果、現金は実際に動いたお金で、両者は一致しない
  • 借入返済の元本・設備投資・在庫・納税が、利益に見えにくい現金流出を生む
  • 月初と月末の現金残高を比べ、固定費1.5〜2カ月分を手元に備えると資金ショートを防げる

明日からの一歩として、今月の通帳を開き、月初と月末の残高の差を確かめてみてください。利益とは別の「現金の動き」を見る習慣が、経営の安心につながります。

📖 さらに深く知る(第3弾より)

参考資料


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