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多店舗展開の数値管理|飲食店が2店舗目以降で利益を守る方法
2店舗目を出すと、利益は2倍にならず、むしろ目減りすることがあります。理由は単純で、1店舗のときは経営者の目が全体に届いていたのに、店舗が増えた瞬間に「見えない数字」が生まれるからです。
多店舗展開で利益を守る鍵は、店長の頑張りではなく、店舗を横断して比較できる数値管理の仕組みです。この記事では、2店舗目が失敗する原因を数値の視点で分解し、見るべきKPIと比較管理のやり方を、計算例とテンプレート付きで整理します。
なぜ2店舗目で利益が崩れるのか
外食産業全体は回復傾向にあり、2024年の外食産業市場の売上は前年比108.4%と報告されています(出典:日本フードサービス協会、2025年発表)。ただし原材料費の高騰で客単価は上がっても客数が伸び悩む店もあり、環境は楽ではありません。この中で店舗を増やすなら、なおさら数値の精度が問われます。
原因1:1店舗目の成功体験で調査が甘くなる
1店舗目は丁寧に立地調査をしたのに、2店舗目は成功体験から条件を軽視しがちです(出典:食べログ オーナーズブログ)。立地・客層・賃料が違えば、必要な売上も原価構造も変わります。1店舗目の数字をそのまま当てはめると見込みが狂います。
原因2:経営者の目が届かなくなる
1店舗のときは、日々の売上・原価・人件費を経営者が肌で把握できます。2店舗目以降は物理的に同時には見られません。数字を吸い上げる仕組みがないと、問題の発見が遅れます。
原因3:人材育成が出店に追いつかない
人材不足や育成不足はサービス品質を下げ、客離れを招きます(出典:食べログ オーナーズブログ)。任せられる店長が育つ前に出店すると、経営者が両店を行き来して疲弊します。
多店舗で見るべきKPIを絞る
KPI設定の失敗の多くは、いきなり細かい指標を並べることから起こります。まずは店舗横断で比較できる少数の指標に絞ります。
FL比率(食材費+人件費)
FL比率は売上に対する食材費(Food)と人件費(Labor)の合計割合です。一般に60%以内が一つの目安とされます。店舗ごとにFL比率を並べると、どの店のどのコストが重いかが一目で分かります。
客単価と客数を分けて見る
売上は客単価×客数に分解します。同じ売上ダウンでも、客数減と客単価減では打ち手が逆になります。多店舗では、この分解を全店共通の様式で持つことが重要です。
人時売上高(人時生産性)
人時売上高は「売上 ÷ 総労働時間」で求めます。店舗の規模が違っても、1時間あたりの稼ぐ力を同じ物差しで比較できます。多店舗の人件費管理で特に有効な指標です。
店舗別の営業利益額
率だけでなく、円の利益額も必ず見ます。利益率が高くても規模が小さければ、本部経費を賄えないことがあります。
計算例:2店舗を同じ物差しで比べる
2店舗の月次を並べて比較します。
FL比率を求めます。
- A店:(180+180) ÷ 600 = 60.0%
- B店:(210+165) ÷ 600 = 62.5%
人時売上高を求めます。
- A店:600万円 ÷ 1,500時間 = 4,000円
- B店:600万円 ÷ 1,800時間 = 約3,333円
売上は同額でも、A店は食材費が軽く、人の生産性も高いことが分かります。B店は食材費の見直しとシフトの効率化が課題です。同じ様式で並べたから、原因の場所が特定できました。
店舗横断の比較管理を仕組みにする
数字は集めるだけでは活きません。比較し、行動につなげる流れをつくります。
共通フォーマットで全店を同じ形にする
店舗ごとに集計の仕方が違うと比較になりません。勘定科目・期間・指標の定義を全店で統一します。店舗数が増えると紙での管理は現実的に難しくなり、システムでの一元管理に移る企業が増えています(出典:食べログ オーナーズブログ)。
週次で異常値だけを拾う
毎日すべての数字を見る必要はありません。前週比・前年比で大きくぶれた指標だけを拾い、その店に絞って原因を確認します。経営者の時間は有限です。
店長と数字の言葉を揃える
店長がFL比率や人時売上高を理解していないと、指示が伝わりません。月次の数字を店長と一緒に読む時間をつくり、判断の基準を共有します。
多店舗数値管理 セルフチェックリスト
出店前・運営中に確認します。
店舗別月次比較テンプレート(コピペ可)
以下をスプレッドシートに貼り、全店で同じ形に揃えてください。
【月次店舗比較表】対象月:____年__月
店舗名 | 月商 | 食材費率 | 人件費率 | FL比率 | 客単価 | 客数 | 人時売上高 | 営業利益額
A店 | | | | | | | |
B店 | | | | | | | |
全店計 | | | | | | | |
※前月比・前年比で±5%以上ぶれた数字に印を付け、その店だけ深掘りするまとめ
- 2店舗目で利益が崩れるのは、調査の甘さ・経営者の目の限界・人材育成の遅れが数字に表れるからです。
- FL比率・客単価/客数・人時売上高・営業利益額を全店共通の物差しで比較します。
- 数字を集める仕組みと、異常値だけを拾う運用をセットで持ちます。
明日から動ける一歩:全店舗の先月の月商・FL比率・人時売上高を1枚の表に並べてみてください。同じ物差しで横に並べた瞬間に、手を入れるべき店と項目が見えてきます。
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📖 さらに深く知る(第3弾より)
参考資料
- 一般社団法人日本フードサービス協会 市場動向調査:https://www.jfnet.or.jp/industry_report/
- 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第8節 開業、倒産・休廃業:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/b1_1_8.html
- 食べログ オーナーズブログ「飲食店の多店舗展開で失敗しないためのポイントとは?」:https://owner-blog.tabelog.com/keiei/post-42.html
- データのじかん「飲食業のKPIとは?KPI例とKPIツリーを解説」:https://data.wingarc.com/kpilogictreeofrestaurantindustry-32909