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法令

飲食店の保険選び(PL保険・休業補償等)

火災保険だけでは、足りないかもしれません

飲食店の保険というと火災保険を思い浮かべる方が多いですが、店を脅かすリスクはそれだけではありません。食中毒、異物混入、客のケガ、そして営業停止による固定費の流出。これらは火災保険ではカバーされない領域です。保険は「起こりうる損害」ごとに役割が分かれており、自店のリスクに合わせて組み合わせるのが基本です。この記事では、飲食店が検討する主要な保険を補償対象リスク別に整理し、公的制度との分担や業態ごとの濃淡まで踏み込んで解説します。何に備え、何は不要かを見極める材料にしてください。

飲食店が直面するリスクの全体像

賠償リスクと財物リスクを分けて考える

保険を考えるとき、まず「他人に与える損害(賠償リスク)」と「自店の財産が受ける損害(財物リスク)」を分けると整理しやすくなります。食中毒で客に健康被害が出れば賠償リスク、火災で厨房が燃えれば財物リスクです。両者で対応する保険が異なるため、どちらも漏らさず押さえる必要があります。

収益が止まるリスクも忘れない

もう一つ見落としがちなのが、営業できない期間の損失です。建物や設備が直っても、休業中の家賃・人件費・水道光熱費は出ていきます。この「営業が止まること自体の損害」に備えるのが休業補償です。

賠償リスクに備える保険

PL保険(生産物賠償責任保険)

提供した飲食物が原因で客に健康被害が出た場合に備えるのがPL保険です。食中毒や異物混入による賠償が代表例です。飲食店での食中毒は社会的にも件数が多く、損保ジャパンの解説では飲食店が食中毒発生の約5割を占めるとされています(令和6年、最新値は公式で確認を)。小規模店のPL保険料は年額2万〜5万円程度、支払限度額5,000万〜1億円が一つの目安とされますが、商品で差が大きいため複数社見積もりをおすすめします。

施設賠償責任保険

店舗の施設や業務の遂行に起因して、客にケガや損害を与えた場合に対応します。従業員が熱いスープをこぼして客に火傷を負わせた、看板が落ちて通行人にあたった、店内で客が転倒した、といったケースです。PL保険が「提供物」に対する備えなのに対し、こちらは「施設・業務」に対する備えで、両者は補完関係にあります。

財物・休業リスクに備える保険

店舗総合保険(火災保険)

火災のほか、水濡れ、風災、水害などによる建物・設備・什器の損害を補償します。厨房機器や内装に多額の投資をしている飲食店ほど、補償額の設定が重要になります。借りた物件の原状回復義務まで考えると、想定より高めの補償が必要になることもあります。

休業補償(店舗休業保険)

火災や食中毒による営業停止で売上が落ちたとき、その減収を補填します。休業中も家賃や正社員の給与は発生するため、固定費の大きい店ほど効果が出ます。食中毒による行政処分での休業を補償対象に含むかは商品によって異なるため、契約時の確認が欠かせません。

食中毒・特定感染症の上乗せ補償

食中毒や特定感染症で営業停止になった際の損失を厚めに補う特約を用意する商品もあります。生ものや加熱不十分になりやすいメニューを扱う店は、この補償の手厚さを比較する価値があります。

公的制度と民間保険の役割分担

労災保険は公的制度で加入義務

従業員のケガや病気のうち、業務・通勤に起因するものは公的な労災保険が担います。飲食店でも、パート・アルバイトを含め従業員を一人でも雇えば労働保険(労災保険・雇用保険)への加入義務が生じます(厚生労働省)。雇用日の翌日から10日以内に保険関係成立届を提出する流れです。これは保険選びの前提となる土台です。

民間の上乗せ労災で不足分を補う

公的労災は法定の補償にとどまるため、賠償額が大きくなったときに不足が出ることがあります。その差を埋めるのが民間の労災上乗せ保険です。事業主自身は労災の特別加入制度で対象に加える手もあり、公的と民間を組み合わせて従業員と経営者の双方を守ります。

サイバー保険という新しい選択肢

モバイルオーダーや予約システム、キャッシュレス決済の普及で、顧客情報の漏えいリスクも現実的になっています。情報漏えいやシステム障害に備えるサイバー保険は、デジタル化を進める店にとって検討対象に入ります。

業態別・リスクの濃淡と保険の優先順位

以下は、リスクと主な対応保険を業態別の重みづけとともに整理した一覧です。

揚物中心の店は油火災ややけど、生もの中心の店は食中毒、アルコール主体の店は酩酊した客のトラブルや転倒、と濃淡が変わります。自店の主力メニューと客層を起点に優先順位をつけると、過不足のない設計に近づきます。明日からの一歩として、まずこの表に自店のリスクを書き込み、現在の契約でどこが空白かを確認してみてください。

まとめ

火災保険だけでは食中毒・客のケガ・休業の損失をカバーできません。

PL保険・施設賠償・休業補償を、自店のリスク別に組み合わせるのが基本です。

労災は公的制度で加入義務、保険料は商品差が大きいので複数社の見積もりを取りましょう。

📖 さらに深く知る(第3弾より)

参考資料


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