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法令

飲食店のハラスメント対策:パワハラ・セクハラ・カスハラから店とスタッフを守る

ハラスメント対策は、もう「大企業だけの話」ではない

狭い厨房、繁忙時の張り詰めた空気、客と至近距離で接する接客。飲食店はハラスメントが生まれやすい条件がそろっています。そして2022年4月から、いわゆるパワハラ防止法(労働施策総合推進法)の防止措置が中小企業にも義務化されました(厚生労働省)。さらに顧客からの迷惑行為、いわゆるカスタマーハラスメントへの対応も、法改正により事業主の義務へと進みます。本記事では、パワハラ・セクハラ・カスハラの3類型を整理し、小規模な店でも無理なく回せる相談体制のつくり方を、厚労省の一次情報とチェックリストでまとめます。

事業主に課される「措置義務」とは

ハラスメント対策は努力目標ではなく、法律上の義務です。何を求められているのかを先に押さえます。

パワハラ防止措置の義務化(中小企業は2022年4月から)

中小企業を含むすべての事業主に、職場のパワハラ防止のための措置が義務づけられています。措置には、方針の明確化と周知・啓発、相談窓口の整備、相談があった際の事後の迅速・適切な対応が含まれます。罰則はありませんが、是正に応じない場合は企業名が公表される可能性があります(厚生労働省)。

セクハラ・マタハラの防止措置義務

男女雇用機会均等法に基づき、セクシュアルハラスメント防止のための措置は、業種・規模を問わずすべての事業主に義務づけられています。具体的には、方針の明確化と周知、相談体制の整備、事実関係の迅速・正確な確認、被害者・行為者への適正な対処、プライバシー保護です(厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」)。

カスタマーハラスメント対策の義務化(2026年10月施行)

2025年の法改正により、顧客等からの著しい迷惑行為に関し、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。施行は2026年10月1日です(厚生労働省。最新の施行内容は確認をおすすめします)。客と密接に接する飲食業にとって、これは特に重要な変化です。

3つのハラスメントの定義と飲食店での具体例

言葉は知っていても、線引きが曖昧なまま運用すると現場が混乱します。定義を正確に押さえます。

パワハラの3要素と6類型

厚生労働省の指針では、パワハラを(1)優越的な関係を背景とした言動、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、(3)労働者の就業環境が害されるもの、の3要素で定義しています。代表的な行為として6類型(身体的な攻撃/精神的な攻撃/人間関係からの切り離し/過大な要求/過小な要求/個の侵害)が示されています(厚生労働省)。厨房で皿を投げる、人前で長時間どなり続けるといった行為が典型です。

セクハラの2つの型

セクハラには、性的な言動への対応によって不利益を与える「対価型」と、性的な言動で就業環境を害する「環境型」があります。飲食店では、シフトを盾にした関係の強要や、身体に触れる・性的な冗談を繰り返すといった行為が問題になります。

カスハラ(カスタマーハラスメント)

顧客からの暴言、土下座の強要、長時間の拘束、SNSでの個人攻撃などが該当します。「お客様だから」と従業員に我慢を強いるのではなく、従業員を守る視点で線引きすることが対策の出発点です。厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公開しています。

業態別に注意したいハラスメントの傾向

出やすいハラスメントは業態で変わります。

厨房中心の店(ラーメン・割烹など)

技術指導と精神的攻撃の線引きが曖昧になりがちです。「指導」を名目とした人格否定が起きていないか点検します。

接客中心の店(カフェ・ファミレスなど)

客との距離が近く、カスハラやセクハラ被害が起きやすい環境です。スタッフが1人で抱え込まない仕組みが要ります。

深夜営業・酒類提供の店

酔客による迷惑行為のリスクが高く、カスハラ対応ルールの整備が特に効きます。

実践:小規模店でも回せる相談体制チェックリスト

専任の人事部がなくても、措置義務は果たせます。次の項目から着手してください。

ハラスメントを許さない方針を文書化し、スタッフに周知している
相談窓口(担当者)を決め、誰に相談すればよいか全員が知っている
店長自身が行為者になり得る場合に備え、第三者(外部窓口等)の相談先も用意している
相談者・行為者のプライバシーを守るルールを決めている
相談したことで不利益な扱いをしないと明言している
パワハラの3要素・6類型をスタッフ間で共有している
カスハラ発生時の対応手順(記録・複数対応・退店要請・通報基準)を決めている
カスハラから守る姿勢を「お客様への掲示」等で示している
問題が起きた際の事実確認と再発防止の流れを決めている
厚労省「あかるい職場応援団」等の無料資料を研修に活用している

相談窓口は「外部活用」で負担を抑えられる

小規模店で社内に専任窓口を置くのが難しい場合、外部のリソースを組み合わせる手があります。

厚労省のポータル「あかるい職場応援団」

ハラスメント対策の動画・裁判例・他社の取組例などを無料で提供しています。研修教材としてそのまま使えます。

公的な相談窓口

都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーで相談できます。社外の相談先を従業員に案内しておくと、店長自身が当事者の場合でも逃げ道を確保できます。

まとめ

  • パワハラ・セクハラ防止措置は規模を問わず義務、カスハラ対策も2026年10月から義務化されます。
  • 「方針の周知・相談窓口・事後対応」の3点が、小規模店でも果たせる措置義務の核です。
  • カスハラは従業員を守る視点で線引きし、外部の無料リソースを使って負担を抑える手があります。

📖 さらに深く知る(第3弾より)

参考資料


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