本文へ移動
記事を読み込み中…
法令

バイトが感染症になった場合、勤務させていい?

「昨日まで元気だったバイトの子が、朝になって熱と下痢で連絡してきた」。そんなとき、人手も足りないし、どうしたものかと悩まれる気持ち、とてもよく分かります。けれど飲食店では、感染症の従業員を調理に入れることが、お店の信用を一度で失う食中毒につながりかねません。法律もこの点をしっかり定めています。今日は一緒に、落ち着いて整理していきましょう。

質問(Q)の整理

ご相談の中身を、もう少し具体的に分けて考えてみますね。

  • アルバイトが感染症にかかったとき、そのまま勤務させてよいのか
  • 調理や配膳など、食品に直接触れる仕事に就かせてよいのか
  • 休ませた場合、休業手当(給与の補償)を払う必要があるのか

感染症といっても、ノロウイルスのような食中毒の原因菌から、季節性インフルエンザまで幅があります。「どの病気か」によって対応が変わる点が、まず大事なところです。

結論(A)

先に結論をお伝えします。腸管出血性大腸菌(O157など)、ノロウイルス、赤痢、コレラ、腸チフスといった消化器系の感染症にかかった、または保菌が分かった従業員は、調理や盛り付けなど食品に直接触れる仕事に就かせてはいけません。これは法令や行政の指針で明確に求められています。

一方、季節性インフルエンザやいまの新型コロナ(5類)には、法律上の出勤停止義務はありません。ただ、お店の衛生と他の従業員を守るため、就業規則にもとづいて休んでいただく判断は十分に合理的です。

法的根拠(条文・通達・判例)

根拠を順に見ていきましょう。

まず感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)第18条です。腸管出血性大腸菌感染症などの三類感染症の患者や無症状病原体保有者に対して、都道府県知事は飲食物に直接触れる業務への就業を制限できる、と定めています。保健所から就業制限の通知が出れば、その間は調理に就かせられません。

次に大量調理施設衛生管理マニュアル(厚生労働省)です。ノロウイルスと診断された調理従事者は、検便でウイルスを保有していないと確認されるまで、食品に直接触れる調理作業を控えることが望ましいとされています。下痢や嘔吐の症状がある人を食品に触れさせない、という基本もここに示されています。

さらに厚労省の「ノロウイルスに関するQ&A」では、症状が治まっても1週間から長いときは1か月ほどウイルスの排出が続くため、回復後しばらくは食品を直接扱う作業に就かせないよう求めています。

これらの土台には、食品衛生法第51条にもとづく営業者の衛生管理義務(食品衛生法施行規則 別表第17の健康管理)があります。従業員の健康状態を把握し、必要な措置をとるのは営業者の責任です。

具体的な対応ステップ

慌てず、次の順番で進めてみてください。

  1. 症状(下痢・嘔吐・発熱など)を聞き取り、まずは食品に触れる業務から外す
  2. 医療機関の受診をすすめ、診断名を確認してもらう
  3. ノロや腸管出血性大腸菌などが疑われる場合は、保健所の指示と検便結果を待つ
  4. 検便で陰性が確認されるまで、調理・盛り付けには戻さない
  5. 一連のやり取りと判断を、日付入りで記録に残しておく

記録は、後日のトラブルやお店を守る大切な証拠になります。

ケース別の判断

ケースごとに整理すると分かりやすいですよ。

  • ノロ・O157など消化器系:症状がある間はもちろん、回復後も検便で陰性が出るまで調理から外す
  • 季節性インフルエンザ・新型コロナ(5類):法的な就業停止義務はないが、就業規則の定めにそって休んでもらう運用が安心
  • 保菌のみで症状なし:本人は元気でも、調理に就かせない。不顕性感染があるため油断は禁物

休業手当については、感染症法にもとづく就業制限で休む場合、一般に「使用者の責に帰すべき事由」にあたらず、休業手当(労働基準法第26条、平均賃金の6割以上)の支払いは不要とされています。これに対し、法律上の義務がないのにお店の判断で休ませる場合は、使用者都合の休業として手当が必要になることが多い点に注意してください。

専門家に相談すべき境界線

次のような場面では、早めに専門家へ相談されることをおすすめします。

  • 就業規則に感染症の出勤停止規定がない、または内容が古い
  • 休業手当を払うべきかの判断が、ケースの事情で割れている
  • 従業員から休業中の補償や復帰時期で不満が出ている

こうした個別判断は、最終的には社会保険労務士・弁護士へのご相談をおすすめします。本記事は一般的な解説であり、お店ごとの事情に応じた確実な対応は、専門家とともに固めていただくのが安心です。


📚 関連する実用ガイド

📖 関連する読み物

参考・引用元