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法令

固定残業代の設定方法は?

スタッフの残業が月によって増えたり減ったりして、毎月の残業代計算がばらばら。だから「最初から一定額を込めておけば楽なのでは」と考える方は少なくありません。これが固定残業代です。ところが、設定の仕方を誤ると、「その固定残業代は無効」とされ、改めて残業代を請求されることもあります。それだけに、要件を丁寧に押さえることが大切です。ここでは、有効な固定残業代の設定方法を、判例と法律にそって一緒に見ていきましょう。

質問(Q)の整理

ご相談の中心は、「固定残業代はどう設定すれば有効になるのか」「一定額を払えば、それ以上の残業代は不要になるのか」「就業規則や雇用契約書には何を書けばよいのか」といった点に集約されます。固定残業代は、正しく設定しておかないと「払ったつもり」が認められません。まずは、有効と認められるための要件から見ていきましょう。

結論(A)

結論として、固定残業代が有効と認められるには、主に三つの要件が必要です。一つ目は明確区分性で、通常の賃金部分と割増賃金部分が判別できること。二つ目は対価性で、その手当が実質的に残業の対価と認められること。三つ目は、固定額が実際の残業代を下回ったときは、その差額を別途支払うことです。つまり、「固定残業代を払えば超過分は不要」は誤りで、超過した分は必ず追加で払う必要があります。

法的根拠

土台となるのは労働基準法第37条です。ここでは割増賃金の支払い義務を定めており、割増率は時間外労働が二割五分以上、深夜労働が二割五分以上、法定休日労働が三割五分以上です。月六十時間を超える時間外労働は五割以上となります。固定残業代であっても、この最低基準を下回ることはできず、不足分の差額支払いが法的義務となります。

有効要件は、いくつかの最高裁判例で確立してきました。明確区分性については、テックジャパン事件(最高裁平成24年3月8日)が、基本給に残業代が含まれるとしたケースで、通常賃金と割増賃金が判別できないとして無効と判断しました。国際自動車事件の上告審(最高裁令和2年3月30日)も、どの部分が残業の対価か明らかでなく、明確区分性を欠くとして有効な支払いと認めませんでした。

対価性については、日本ケミカル事件(最高裁平成30年7月19日)が重要です。「業務手当」名目の固定残業代について、契約書の記載や使用者の説明、実際の勤務状況などを総合考慮して対価性を判断する、という枠組みを示し、本件では有効と判断しました。先例として高知県観光事件(最高裁平成6年6月13日)も、判別可能性の必要性を示しています。

具体的な対応ステップ

まず、就業規則や雇用契約書に、固定残業代の名称と金額、それに含まれる残業時間数を明記します。例えば「固定残業手当○万円(時間外労働○時間分)」のように書きます。次に、基本給(通常労働の対価)と固定残業代を金額で明確に区分して示します。そして、設定時間を超えた場合は超過分の割増賃金を法定どおり別途支払う旨を必ず記載します。さらに求人を出すときは、固定残業代を除いた基本給、固定残業代の金額と時間数、超過分は追加で払う旨の三点を明示する必要があります。「固定残業代含む」とだけの表記は不十分です。

ケース別の判断

基本給に残業代を「込み」で含めるだけで、区分を示さないケースは、明確区分性を欠き無効と判断されやすいものです。手当の名称を付けても、金額と時間数が不明確だと同じです。一方、金額と時間数を明示し、実際の残業状況と大きく乖離していないケースは、対価性が認められやすくなります。ただし、設定時間が極端に長く、実態とかけ離れている場合は、公序良俗の観点から問題視されることもあります。そして、固定額を超えた月に差額を払わなければ、それだけで未払いとなります。

専門家に相談すべき境界線

自店の固定残業代が明確区分性・対価性を満たしているか、設定時間数が妥当か、就業規則の文言は十分か。こうした点は、万一未払い請求や労働紛争になったときに大きく関わります。固定残業代を新たに導入するときや、就業規則を見直すときは、社会保険労務士へのご相談をおすすめします。既に紛争が生じている場合は弁護士が適任です。判断は事情ごとに変わりますので、最終的には社労士・弁護士・専門家へのご相談をおすすめします。


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参考・引用元