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法令

残った食材をスタッフが持ち帰っていい?

「どうせ捨てるんだから、持って帰ってもいいよね」。閉店後の厨房で、そんな声が出ることはよくあります。食品ロスを思えば気持ちはわかりますし、店長として大目に見たくなることもあるでしょう。けれども、無断の持ち帰りは、思いのほか重い法的リスクをはらんでいます。お店を守り、スタッフを守るためにも、ルールを整えておくことが大切です。一緒に整理していきましょう。

質問(Q)の整理

ご相談はこうです。「営業後に残った食材や、廃棄予定の食品を、スタッフが持ち帰っています。捨てるものだから問題ないと思っていましたが、法的にはどうなのでしょうか。トラブルを防ぐにはどうすればよいですか」。論点は、所有権の所在、刑事責任の有無、そして食品衛生上の安全です。

結論(A)

結論から申し上げます。たとえ廃棄予定であっても、店内に保管されている食材の所有権はお店にあります。会社が認めていないのにスタッフが無断で持ち帰れば、業務上横領罪や窃盗罪に問われる可能性があります。一方で、お店がルールを定めて正式に許可すれば、持ち帰り自体は可能です。ただし、その場合も食中毒のリスクには十分な配慮が必要です。

法的根拠(条文・通達・判例)

廃棄予定の食材であっても、店内にある間は会社の所有物です。これを業務上預かる立場のスタッフが無断で持ち出せば、刑法253条の業務上横領罪(10年以下の拘禁刑)にあたるおそれがあります。占有の態様によっては刑法235条の窃盗罪(10年以下の拘禁刑)や、刑法254条の遺失物等横領罪が問題になる場合もあります。被害額が小さくても、繰り返されれば懲戒や刑事処分が相当と判断されることがあります。

懲戒処分を行うには、就業規則に処分の理由と内容を定めておくことが前提です(労働基準法89条・91条)。なお、食品衛生法には廃棄品の持ち帰りそのものを禁じる規定はありませんが、食中毒防止の観点から取り扱いには注意が必要です。消費者庁・厚生労働省は令和6年12月に「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」を公表し、持ち帰りは自己責任を前提に、加熱・冷却や早めの消費など衛生面の配慮を求めています。

具体的な対応ステップ

まず、就業規則に「会社の許可なく食材・備品を持ち出すことを禁止する」旨と、違反時の懲戒を明記してください。これがないと、注意や処分の根拠が弱くなります。

そのうえで、食品ロス対策として持ち帰りを認めたい場合は、「対象品目」「持ち帰ってよい時間や方法」「自己責任である旨」をルール化し、文書でスタッフに周知します。許可制にすることで、無断持ち出しとの線引きが明確になり、横領の疑いを避けられます。記録を残す運用にすると、なお安心です。

ケース別の判断

まかない用の食材を分け合うなど、会社が黙認・許可している範囲であれば、横領にはあたりません。問題になるのは、許可がないのに自己判断で持ち帰るケースです。「捨てるものだから」という思い込みが、トラブルの火種になります。

また、生ものや要冷蔵品を持ち帰らせる場合は、食中毒のリスクが高まります。万一の健康被害を避けるため、加熱済みのものに限る、当日中の消費を促すなど、衛生面のルールを添えてください。

専門家に相談すべき境界線

実際に無断持ち帰りが発覚し、懲戒や刑事告訴を検討する段階になったら、対応を誤ると不当解雇などの逆リスクが生じます。処分の相当性は社会保険労務士や弁護士に、刑事責任の判断は弁護士にご相談ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断に代わるものではありません。ルール作りや処分の場面では、必ず専門家の確認を受けることをおすすめします。


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参考・引用元